
マリナーラ/船乗り風ソース

今回調理する、船乗り風ソースは、日本においてもおなじみのシンプルなソースのレシピを紹介します。
非常に幅広く、従来の情報、固定概念とは異なる内容もあると思われる為、紹介内容・解説の分量があります。調理にすぐに進みたい場合、こちらより食材一覧~調理工程へのジャンプください。
Headline
- 1 "マリナーラ"の由来と意味
- 2 マリナーラはバリエーションが豊富
- 2.1 トマトソースを使わないマリナーラもある
- 2.2 マリナーラの有名なバリエーション
- 3 マリナーラにチーズは厳禁
- 4 マリナーラのソースの使われ方
- 4.1 ピザソースとしての歴史と特徴
- 4.2 パスタのソースとして使用
- 4.3 肉に添えるソース
- 4.4 クロスティーニ(クルトン)に添える
- 5 当サイトのマリナーラソースについて
“マリナーラ”の由来と意味
「マリナーラ」[marinara]という名前の由来は、「海に関する」[relativo al mare]を意味するイタリア語の「マリーナ」[marina]に遡ります。
この名前は当初、イタリアの沿岸地域に住み、漁業や海洋農業など海関連の活動に直接関わることが多い女性、つまり船乗りたちの家族を指していたと考えられています。
我々が耳にする船乗りたちの家族が海からの帰りをまち、帰ってきた夫たちにマリナーラを提供したという話もその一端ではないかと思います。
その後、イタリア料理と関連付けられるようになり、南イタリアの典型的なトマトソースで、その起源は船員の料理の伝統にあるとして認識されています
マリナーラはバリエーションが豊富
船乗り風(Alla marinara)は、日本においてはかなり固定的なイメージを持たれていますが、実は、かなり広い意味を持つ表現で、バジルやオレガノなどの地中海地域の芳香性ハーブを使用し、時にはオリーブ、ケッパー、塩漬けアンチョビも使用されたりもします。
トマトソースを使わないマリナーラもある
おそらく殆どの日本人読者が驚く事実として、通常、これらの材料にはトマトソースが添えられますが、必須の材料ではないことがあげられます。
マリナーラの有名なバリエーション
先に挙げた通り、船乗り風(マリナーラ)の指すものは、幅広く、地域によって多くのバリエーションが存在します。
ムール貝の船乗り風[mòscioli alla marinara]
ムール貝は産地が分かれており、この[mòscioli]は、コーネロ岬付近でとれるムール貝です。
オリーブオイル、レモン、パセリ、挽きたてのコショウで味付けするコーネロ・リヴィエラの典型的な調理法なのだそうです。
コーネロ・リヴィエラ周辺の船乗り風パスタ
コーネロ・リヴィエラなどの一部の地域では、船乗り風パスタ(パスタ・アッラ・マリナーラ)[Pasta alla marinara]はトマトを使わずに魚介類で味付けされます。
この材料(トマト)を加えると漁師風スパゲッティ(スパゲッティ・アッラ・ペスカトーラ)[Spaghetti alla pescatora]と呼ばれるようになるそうです。
他の地域において船乗り風と漁師風の違い
ムール貝や海老などの魚介類とバターを使用したものが漁師風、それらが使用されていない場合が船乗り風として分けられるのだそうです。
シチリアの船乗り風
各地によって様々なバージョンがあり、特徴的です。
アグリジェント[Agrigento]
この地域では、パスタ・アッラ・マリナーラ[Pasta alla marinara]にはアンチョビとケッパーが含まれていることが多く、ソースに塩味とスパイシーな風味を加えるのが特徴なのだそうです。
トラーパニ[Trapani]
トラーパニでは、ソースを作るためにイワシを使用することが好まれており、独特の甘酸っさがあり、松の実とレーズンも加えられます。
カターニア[Catania]
ここのパスタ・アッラ・マリナーラ[Pasta alla marinara]のバージョンには、より強力でスパイシーな風味を加える為、揚げたナスや唐辛子などの材料が含まれています。
パレルモ[Palermo]
パレルモでは、パスタ・アッラ・マリナーラ[Pasta alla marinara]にトーストしたパン粉を加えて提供することがあります。
これらすべての地域的バリエーションにおいてソースのベースとして熟した新鮮なトマトを使用しており、これらは、シチリア風マリナーラのパスタ[pasta alla marinara siciliana]としてシチリア島の伝統料理として知られています。
イタリア系アメリカ料理の典型的なマリナーラソース
タマネギ、セロリ、ニンニク、ブーケガルニを含むマリナーラ調理法の変形と言われています。
マリナーラソースに似たソース
中部イタリアでは偽ソース(スーゴ・フィント)[Sugo finto]又は逃げたソース(スーゴ・スパッカート)[Sugo scappato]、逃げた鶏(ポッロ・スカッパート)[Pollo scappato]として知られています。
マリナーラにチーズは厳禁
細かなルールは厳密には把握しきれていませんが、基本的にイタリアの多くの地域で海鮮系料理にチーズは禁忌といえる位置づけで、気持ち悪いとさえ感じる方もいるそうです。
ピッツァにおいてでしたが、モッツァレラを要求した方に対し、「恥知らず」という強い表現を使って評している記事もありました。
日本人のノリで現地でモッツァレラを要求すると人によっては冒涜と感じる方がでてくるかもしれません。モッツァレラを使うマリナーラは存在しないのだそうです。
マリナーラのソースの使われ方
イタリアにおいても非常によく知られているのは、ニンニク、オレガノ、トマトソースを使った マリナーラピザです。
次にヴェルミチェッリ(Vermicelli:細長いパスタです)やスパゲッティのソース、肉や魚(タラ)にかけるソースとして使用されます。
また、日本においても昨今、マリナーラのパスタは知名度が上がっているように見受けられます。
様々な料理に使用されるマリナーラソースの楽しみ方について紹介しておきます。
ピザソースとしての歴史と特徴
船乗り風ピッツァ(ピザ・アッラ・マリナーラ)[Pizza alla marinara]は、ピザ・マリナーラや単にマリナーラ[Pizza marinara/Marinara]とも呼ばれます。
特に南イタリアで高く評価されており、味の点で水牛モッツァレラを使ったピザに次いで 2 番目に人気のあるピザなのだそうです。
1970年代までは「オイル・アンド・トマト」[Olio e pomodoro]と呼ばれていましたが、その後、当時、船旅から帰る途中に漁師たちが食べていた18世紀初頭のピザの名前、現在のマリナーラがつけられたのだそうです。
しかし、当時(1734年)はまだトマトがナポリ料理の主流ではなく、「マリナーラ」はアンチョビ、ケッパー、オレガノ、ガエタ産の黒オリーブとオイルで作られていたため、現在のものとは全く異なっていたという情報があります。
深堀調査していくと元々は貧しい階級によって新鮮なトマト、エクストラバージン オリーブ オイル、オレガノだけで調理されていたマリナーラソース[Salsa alla marinara]。そこに裕福な人は、アンチョビやチェシニエリ[Cecinielli](しらす)を加える余裕があったという情報が確認できました。
パスタのソースとして使用
スパゲッティ・アッラ・マリナーラ[Spaghetti alla marinara]は、名前にもかかわらず、材料に魚が含まれていない、非常に経済的でシンプルな最初のコース(プリモ)です。
先にご紹介した通り、船乗り風[Alla marinara]は、地域によって大きく異なるバリエーションがあり、その上、更にそれぞれの家庭の味があるといわれています。
多くの地域においてマリナーラは、ムール貝や海老などの魚介類とバターを使用していないものですから、船乗り風としながらも海を連想させる具材がないという、その歴史やバリエーションについての見解がないととても不思議に感じるパスタです。
これまでみてきた歴史、バリエーションから考えると、今回ご紹介するマリナーラソースは、初期の庶民が食していた一番シンプルな形のものと言えそうです。
そのシンプルな船乗り風ソースを使って調理するパスタ料理が僕個人的にはとても好きです。
肉に添えるソース
以前、日本のナポリタンをご紹介した際に、トマトソースの歴史に触れました。
元々トマトソースは、肉料理にそえるソースとして推奨されていたことからも想像がつくように、現在においても肉料理に添えられることが多いソースです。
マリナーラソースは、七面鳥や牛肉を選択し、肉のスライスに添えるソースとしても使用されます。
この場合、この料理はピッツァ風肉(カルネ・アッラ・ピッツァイオーラ)[Carne alla pizzaiola]と呼ばれ、オリーブオイルとニンニクを入れたフライパンで肉のスライスを炒めて調理されます。
両面がきつね色になったら、マリナラソースを炒め煮込み香草を加えた料理です。
クロスティーニ(クルトン)に添える
ピザ、肉だけではなく、マリナーラソースは、ブルスケッタやカリカリにやいたパン、つまりクロスティーニ(クルトン)に添えるのにも最適です。
パンをスライスして、カリカリになるまでオーブンで数分間加熱し、スプーン一杯のマリナラソースを塗ります。
また、下記のトマトのクロスティーニのようにフィンガーフードとして提供できます。
当サイトのマリナーラソースについて
これまで紹介してきた通り、様々なバリエーションがあるマリナーラソースですが、核となる部分、最もシンプルな形のトマトソースのレシピを紹介します。
これは、先に紹介したマリナーラソース[Salsa alla marinara]の内容が確認できる中でもっとも古い時期、庶民が楽しんでいたバージョンです。
マリナーラ/船乗り風ソース材料4人分
ニンニク 2欠片
乾燥オレガノ1~2つまみ
イタリアンパセリ一掴み(オプション)
オリーブオイル20g
塩・黒胡椒 適量
1人分:約88カロリー
マリナーラ/船乗り風ソース調理工程(約30分)
黄金色になったら、洗って刻んだトマトを加えてよく混ぜ、塩、オレガノ、お好みでイタリアンパセリ(仕上げ用除く)で味付けし、30分ほど弱中火でソースになる迄煮込みます。
煮込みが終わったら塩味を確認し、イタリアンパセリとオレガノを加えます。
ピッツァやパスタのソース等に使用できる美味しいソースの完成です。

マリナーラ/船乗り風ソースの調理ポイント
オリーブオイルにニンニクの風味を移したらトマトを加えてじっくりと煮込んでいきます。
オレガノを聞かせた独特の風味はとても食欲をそそりますよ!
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