
Spaghetti alla poverellaスパゲッティ・アッラ・ポヴェレッラ
スパゲッティ・アッラ・プヴェリエッロ(Spaghetti alla puveriello)が元々の表記なようです。
タイトルのカッコ内の名称は日本語圏で若干ながら普及しているこのパスタを表するものですが、僕は相当な違和感を感じ、誤りと言ってよい訳し方ではないかと疑問と若干の憤りを感じています。
本来のこれら、パスタ・アッラ・ポヴェレッラ(Pasta alla poverella)/プヴェリエッロのレシピでは、卵は一つ、仕上げの目玉焼きはつきません。目玉焼きを乗せて仕上げるこの品は、目玉焼きスパゲッティ(Spaghetti con l’uovo fritto)であるという情報も散見します(イタリア語圏)。
元々このパスタは戦後、食料が不足している時代になけなしの食糧を組み合わせて調理した、当時のささやかな贅沢であり、救いの一皿だったのだそうです。
歴史的経緯
この料理はナポリ・カンパニア地方の典型的な料理とされています。
これは、当時スペイン人街(ナポリがスペイン統治だった時代に、スペイン人の総督たちが居住していた地区)に戦争難民・孤児を匿っていた一般人が作った品だったと言われていることとも齟齬がありません。
彼らには食べさせてあげられる食料があまりありませんでした。冷蔵庫も当時はありませんから地下室に保管していたなけなしの卵、パンチェッタとスパイスを使用して即席で作った料理なのだそうです。
その為、オリジナル(元祖レシピ)は、卵は一つ、バターもオリーブオイルも使わずラード、そしてペコリーノもパルミジャーノも使わない粉チーズ、胡椒にて調理されていたそうです。
卵、ラード、粉チーズといったの基本的な3材料ですぐに調理でき、空腹の苦しみを和らげることを目的としたシンプルな料理でした。
現代レシピへの移行
時間の経過とともに、ラードの代わりにオリーブオイルやバターが使用され、風味付けにパルメザンやパルミジャーノ、ペコリーノが使用されるようになったのだそうです。
純粋に品を楽しむための進化だと思いますので、当ページにおけるレシピ手順も現代風レシピにて記載させて頂きます。
このような歴史をたどった料理なので、この料理は最初のコース(Primo Piatto)というよりも、あらゆる意味でこの一皿のみで完結する1つの料理として考えることができます。
プヴェリエッロについて
「プヴェリエッロ」という用語は、いわゆる貧困、貧乏、貧しさを指すのではなく、貧困の時代、つまり第二次世界大戦後の数年間を指します。
スパゲッティ・アッラ・「プヴェリエッロ」は貧しい人々の「カルボナーラ」と定義されることがありますし、日本においてもそのように説明されることがあるようです。
チーズと卵を使う点が共通していますが、卵が目玉焼きであり、元来このパスタは、ペコリーノを使う余裕がなかったパスタですから、生まれた時代は近しいものの(カルボナーラは戦中の発祥)カルボナーラの要素がありません。
当サイトにおいてこのパスタの名称の訳し方を検討しました結果、この記事をまとめる過程で適切と判断した「貧困時代のスパゲッティ」として訳し、表記することにしました。
貧困時代のスパゲッティ(貧乏人のパスタ)材料1人分
卵2個
ペコリーノ(代用:パルメザンやパルミジャーノ)20g
オリーブオイル大匙1/2杯
バター10g
塩適量
黒胡椒適量
1人分:約708カロリー
貧困時代のスパゲッティ(貧乏人のパスタ)調理工程(約20分)
今回はチーズ系で和えるだけなので、表記時間ちょうど、アルデンテでゆで上げる予定です。
湯を沸かしている間にチーズをすりおろしておきましょう。
一つは仕上げに乗せる用、もう一つはパスタに混ぜ込みます。

フライパンに胡椒を挽いて軽く炒めて香りがしっかりでたらゆで汁お玉一杯投下してひと煮立ちさせてベースソースを作り、火を落としてパスタが茹で上がるのを待ちます。

バターを加熱して溶かしてゆで汁お玉一杯投下してひと煮立ちさせてベースソースを作り、火を落としてパスタが茹で上がるのを待ちます。

ベースソースをある程度パスタに吸収したら目玉焼きの一つをフライパンに投下して、黄身をはじめ全体を崩して混ぜ合わせてパスタに吸収させていきます。

皿に盛り付けて、もう一つの目玉焼きを飾り、胡椒を散らしたら完成です。

貧困時代のスパゲッティ(貧乏人のパスタ)の調理ポイント
調理方法としては使用するチーズによってベースソースの作る工程が若干異なる部分に注目です。
ペコリーノを使用する場合は、カーチョ・エ・ペペの調理法とほぼ同じ。
パルメザン/パルミジャーノで調理する場合は、ブーロ・エ・パルミジャーノの調理方法とほぼ同じです。
元祖レシピはラードと粉チーズの組み合わせでしたのでパルミジャーノバージョンに近い作り方ですね。
卵を加えることの贅沢さの一端を感じていただけたでしょうか?これは当時の誰かの大切な思い出の味。
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